職人としての誇り。
生み出した
数多のお菓子は
自らの映し鏡
不思議なことに職人の気持ちがそのまま表れるのがお菓子づくりです。手作業なので自分の精神状態が良くも悪くもお菓子に反映される。高揚しても沈滞してもいけません。なるべく平常心でお菓子に向き合うことを30年以上心掛けてきました。同じものをつくってもつくり手によって表情が変わるのは、それぞれの職人の感性ですね。微妙な色味の調整や力加減、お菓子に付ける名前にもそれぞれの個性が光ります。技術面だけでなく、専門書を読んだり他のお店のお菓子を食べたり、短歌や俳句、書を嗜んで勉強することも修行のひとつです。
繊細な手仕事で
美しい四季を
つくり出す
長年菓子づくりに携わるなかでふと「日本の四季を提供させてもらっているんだな」と実感することがあります。1年、12カ月、季節に合わせた菓子をつくるなかで実は同じ葉の表現であっても、5月と6月では葉の青さや深みを変えているんです。こうしたお客さまが気づかれない繊細な所にまで徹底してつくっているのは、筑紫もちなどの土産菓子だけでなく上生菓子でも福岡で一番を目指しているからです。一年中どこにいてもなんでも簡単に手に入る時代だからこそ、手づくりの上生菓子で日本の美しい四季を伝えたい。今は季節を感じられるお菓子をつくることこそが、職人の誇りであり使命だと感じています。
桜は桜、梅は梅
置かれた場所で
自分らしく花開く
座右の名は「桜梅桃李(おうばいとうり)」ですね。これは、社長が常々言われている言葉でもあります。桜は桜、梅は梅。それぞれが独自の美しい花を咲かせるように、他人と自分を比べることなく、個性を磨いていく。この言葉が好きで、私自身も自分にしかできないお菓子づくりを如水庵で続けてきました。30年以上経った今もまだ道半ば。職人として歩んでいく以上はこれからも一人でも多くの方に和菓子の魅力を伝えていきたいですね。若者や海外の方にも親しみやすいような和菓子をつくっていかなくてはならない。日本の季節や技術の素晴らしさを自分なりに表現できる職人であり続けたいです。