最初は甘柿を使ったお菓子を何度も試作しましたが、ぼんやりとして味に決め手がない。
そこで、当時の菓子職人が糖度の高い干し柿を使ってはどうか思いついたです。全国から数々の干し柿を取り寄せましたが、色が黒いものや歯ざわりの硬いものばかり。
そんな折り、高価ではあるものの「これだ！」と確信したのが市田柿でした。
この市田柿を刻みこんだ柿餡で大福をつくったところ、これ以上ないという自信作が出来ました。
ところが、「市田柿はそのまま食べていただくために一つひとつ丹精されたもの。菓子材料としては売れません」と仕入を断られてしまったのです。諦めきれず、「お菓子を食べていただくしかない」と試作品を業者さんにお送りしたところ、「うちの市田柿をこんなに大事にして、見事なお菓子にしてくださるとは」と感激していただけたのです。
如水庵の思いが遠く信州で柿づくりに励む皆さんに通じたことで、
これまでにない柿大福が誕生したのです。